回顧録 No.2

説明会の最中事務所から電話がかかって来ました。
コールが止まないので退席し出たところ、
事務員『会長(じじい)から破産の連絡がきました。どうしましょう…。』
僕『ん…?どういうこと??』
事務員『分かりません…。』

僕はじじい(会長)に連絡するも、電話には出ず…。
社長(じじいの息子)にも連絡するが、こちらも応答なし…。
取引口座の移行が完了しないまま破産されてしまいました。

初めての経験で、どうすればいいのか途方に暮れたのを今でも覚えています。
しかし、何もしないわけにはいきません。
まずは大口の得意先へ説明に向かうことにしました。
担当者では対応できず、「本部まですぐ来い!」と言われ、急いで向かいます。
そこで待っていたのは鬼の形相の担当者たち。

「どういうことなんだ?」
「そもそもお前は誰なんだ?」

当然の反応です。
そう思いながらも、事情を説明し、商品を回収し、最後まで責任を持って対応することを約束しました。
しかし、誠意を尽くしても取引は打ち切られてしまいます。

その後も、取引先からの問い合わせが相次ぎました。
同業他社はここぞとばかりに情報を流し、シェアの拡大を狙ってきます。

必死に説明し、取引の継続をお願いしましたが、取引先の多くは離れていきました。
20件ほどあった取引先は、気づけば5件ほどに…。
一度崩れると、一気になくなってしまうものなのだと痛感しました。
そんな絶望の中、数少ないお客様がこう言ってくれました。

「君との取引を続けるよ」

その言葉に、どれほど救われたことか。
困っている人を見捨てるのではなく、手を差し伸べることの大切さを学んだ出来事でした。
2025年2月11日更新

数件の得意先は残ったものの、仕事はほとんどない状況になってしまいました。
とはいえ、ただ暇になったわけではありません。
というのも、うちの会社は破産した会社と同じ場所・電話番号を使っていたため、「社長はどこだ?」「お金を返してくれ!」という電話や訪問がひっきりなしに来るようになったのです。

「うちは別会社で、営業権を買っただけで無関係です」と説明しても、「そんなの知るか!」と聞く耳を持たない人ばかり。

翌日から事務所の前には、黒塗りの怪しい車が停まるようになりました。
気になっていると、運送会社のドライバーさんが教えてくれました。
「あれ、反社の人たちだよ。多分、変なところから金を借りてたか、債権を格安で買い上げた業者が取り立てに来てるんだと思う。
でも、事務所に入ってきたら不法侵入だから警察を呼べばいいよ。大丈夫、大丈夫!」

いやいや、それって全然大丈夫じゃないんですけど…。

反社の世界とは無縁の人生を歩んできたので、車がいなくなるまでの数日が、途方もなく長く感じられました。
その時、世の中には「債権回収業務」なるものがあると初めて知り、ドラマの中だけの話だと思っていたものが現実にあることを実感しました。

そんな中、本社から「FAXが届かないんだけど?」と連絡が。
調べてみると、電話の契約が破産した会社の名義のままで、支払いが滞っていたために止められてしまっていました。
急いで電話会社に連絡し、事情を説明して即支払い。無事に復旧しました!笑

さらに、電気や水道も名義変更をしていなかったため、すぐに手続きを完了。
こうして、「支払いが滞った場合に止められる順番」まで学ぶことになりました。

幸いにも、事務所の名義変更は完了していたので拠点を失うことはありませんでしたが、売上がない状況でも家賃の支払いは発生します。
滞納すれば追い出されることに…。
本社の支えがあったおかげでなんとかなりましたが、もしそうでなかったら銀行から資金を借りなければならない状況でした。
でも、あの時の状況で果たして貸してくれたのか…正直、微妙だった気がします。
2025年2月20日 更新

初めて「仕事がなくなる」という経験をしました。
多少の注文はあるものの、ほぼ何もすることがない状況。
これが何よりも辛い……。

「今日は何しようかな?どこか遊びに行っちゃおうかな♪」と、開き直ることができればよかったんですが、そうもいかず。

そんな中、横浜開港イベントが迫っていて、たまたま人づてに紹介してもらった方を配送スタッフとして1名増員することになりました。

このイベントは事前の評判が非常に高く、プレオープン時にはものすごい人だかりに。
「これは期待できるぞ!」と、関係者の誰もが胸を躍らせました。
しかし、いざ蓋を開けてみると……まさかの大失敗。
全く品物が動かない。
イベント用に準備した大量の在庫、追加したスタッフの人件費――
それらが重くのしかかり、僕の心にさらに追い打ちをかけてきます。

結局、期待していたイベントも状況を変えてはくれず、当初の目論見はすべてご破算。
事務員・配送スタッフ・僕の3人で、ただただ暇な時間が流れていきました。
あの、何とも言えない空気感。
それがまた、不安を増幅させるんですよね……。

どうしましょ。

暇なことに飽きた頃、ようやく本気で営業活動を始め、少しずつ得意先が増えていきました。
そんなある日、とても素敵な商品に巡り合い、得意先に紹介したのですが……ことごとく断られてしまう。
理由を聞くと、「昔、似たような商品を扱ったけど売れなかった」とのこと。
どんなにこちらが「これは良い!」と思っていても、店頭に並べてもらえなければ、お客様の目に触れることすらできません。

でも、もう仕入れちゃってるし……。

またまたまた、追い打ちをかけてしまいました。

ビジネスセンス、ないかも……。
2025年3月5日 更新